格闘家であり経営者の顔も持つ佐藤先生に質問です。私は春から大学3回生になり就職先を意識するようになりました。そこで、趣味のキックと仕事を両立し易い地方公務員、趣味を仕事に出来るような民間企業、のどちらを目標にするべきか悩んでいます。私は仕事の第一目的は食べるためだと考えるのですが、佐藤選手の労働観念を教え下さい。趣味と仕事の境目はあるのでしょうか?

私は中学生の頃からキックボクシングを始め、いつの間にかそれを天職にし、そこから経営者や作家としての道が開けた珍しいタイプの人間だと思います。「趣味を仕事にするのは辛い」とよく言われますが、私もそう思います。ただ、私は食べるためだけに仕事をしたことがないので、好きでもない仕事をする感覚を知らないというのが正直なところです。経営者や作家も、好きでやっています。だから、趣味と仕事の境目が全くありません。一般的な感覚で言う“休み”は一日もありませんし、心底気の休まるときもありません。たとえば携帯電話が鳴ると「何かトラブルが起きたんじゃないか」と、いつもビクビクしています。選手を引退して、経営者としても引退して、作家活動一本になったとき、その臆病な気持ちはなくなるのかもしれません。でも、それと同時に、臆病な気持ちの無い人間に果たして面白いモノが書けるのだろうか、という疑問もあります。そして、「もうオレは面白いモノが書けないんじゃないか」とビクビクするのでしょう。本当に休める時がやってくるのは死ぬ瞬間なのかもしれません。