自分には病気があり、症状と治療薬の副作用に悩んでいます。自分が健康な頃は、努力でなんでもできるような気がしてたのですが、病気になり「努力や意志ではどうにもならないことが世の中にたくさんあるのかな」と思うようになりました。佐藤さんのように格闘家というストイックな世界で活躍する方から見て、努力や意志力の限界って、どんなときに感じると思いますか?
「諦めなければ夢は叶う!!」なんてことは言えません。人それぞれに才能や資質は違うわけですから。たとえば、「佐藤さんと同じくらい努力すれば、全員キックの世界チャンピオンになれるのか?」と聞かれても、そんなことは保証できません。ただし、矛盾するかもしれませんが、自分を信じて努力を続けなければ世界チャンピオンになれなかったでしょう。努力を注ぐと決めた場所が、たまたま私の才能を発揮できるところだったに過ぎません。要するに「運が良かった」んです。努力や意思力の限界も人それぞれです。両親からの遺伝、友達や恋人、指導者、支援者との出会い。それらの要素が色々組み合わさって、自分が努力できるかどうかが決まります。人、環境すべて含め「努力できる自分を作ってくれた周りのおかげ」なんです。私自身の力だけでできることは本当に限られています。その基本的な考え方に基づいて、やれることをやるしかないと私は思います。私がまだ10代の頃に、中日新聞の『中日春秋』に載っていた大江健三郎氏の言葉がいまだに頭にこびりついて離れません。「本当のチャンピオンとは、自分だけではなく誰かのためにも戦える人間である。」