2008年に日産初代ムラーノを買ってから13年ぶりに車を替えました。前回の車検時に新しく購入を決めたのですが、それに満足して結局また２年経ってしまうという……。

ムラーノの前はキューブに乗っていました。可愛らしい自動車といかつい格闘家のイメージとの対比に、車好きの初対面の方には信じてもらえないことも。「それはカムフラージュで、本当はBMWやメルセデスベンツに乗っているんでしょう？」と。

戦いで得たファイトマネーというのはあぶく銭です。それで得た高級車から生み出されるものは案外と少ない。

もちろん、選手個人のブランディングにはなるでしょう。しかし、右を見ても左を見ても高級車に乗っているトップアスリートは多くいて、車体価格相応の差別化は図れない。つまり、ブランディングよりも自己満足によるところが大きい、という判断をしました。

溢れ出てくる自己顕示欲を努めて抑え、本来車に使っていたであろうお金の多くを事業に投資しました。そこから生み出されたお金こそ活きたお金。

車が生み出してくれるものは少ないです。そのための借金はできればしたくない。勝ち目のある事業の借金は臆せずにしますけれど。

ちなみにこの初代ムラーノは、当時の日産の最高級車の一台です。本当に良いものは長持ちしますね。

目立った故障は2019年にパワステが豪快にぶっ壊れた１回のみ。バッテリー切れでJAFを２回呼びましたが自分の責任です。釘が刺さってパンクしたこともありますが、これはもう仕方がない。無事これ名車でした。

しかし、良い車でしたが運転はしづらかったです。はい、こまめに何回もぶつけました。私の下手な運転技術のせいもありますが、結局13年間、ムラーノの内輪差を理解することはついぞ叶いませんでした。

本革シートやダッシュボードもカッコよかったけれど、ナビはDVD式の古いまま。名二環（2010年にできた名古屋近隣の高速）も表示されません。とはいえナビはほとんど使わないので問題なし。そのおかげかナビを駆使している多くの人たちより、方向感覚は優れている自信があります（迷うこともある）。

これから技術が進歩すればするほど、それに囚われている私たちは逆にどんどん退化していくでしょう。私はその退化のスピードを出来るだけ緩やかにし、最期まで自分の頭で物事を考えられるようにしたいのです。

便利さにかまけて思考停止し、盲信するのは危険です。「さあ、この崖を落ちたら目的地ですよ！」とナビが誘導してきても、「きっと正しいはずだ」と疑いもせずに奈落の底へと突っ込んで行きかねません。

〜初代ムラーノとの最後の夜〜

初代ムラーノを購入したのはJKF会員No.2の友人から。

先日、「良い新古車を見つけたからとりあえず買ってみた」と、この友人が試乗して来た車を、私は「それいいですね」と一目で気に入りました。希望していた車種とは違いましたが、試乗もせずに買いました。友人が「物凄く良い」と言うなら物凄く良い車なのでしょう。

納車前日。13年乗ってきた初代ムラーノとの最後の夜、JKF池下での勤務が終わってから軽く最後のドライブへ。走行距離も10万kmを超え、細かい傷や凹みもあります。内緒にして走っていましたが、2020年の暮れには本郷のコインパーキングで車体底部を損傷しました。おそらくこのまま廃車でしょうか。

私はどちらかというと八百万（やおよろず）の神を信じています。きっとこのムラーノにも魂はある。何回もぶつけはしたけれど、それなりに大切に乗ってきたことは彼（ムラーノ）もわかっているはず。

ある飲み会で、私が車を買い替えるという話題になりました。その中で、なぜ13年間も同じ車に乗ることができたのか、という話にたどり着きました。たしかに、車検だから、故障したから、ぶつけたから、という理由で車を変えようとは思いませんでした。「嘉洋くんは、ムラーノを愛していたのでは？」「そうですね。僕は、ムラーノを愛していました」

最後のドライブの途中、「よくがんばってくれた」とハンドルを軽く叩いたとき、こみ上げるものがありました。たくさんの思い出をありがとう。相棒、愛してるぜ。

おそらくもう二度と会うことのない今生の別れです。人生は一期一会、そして会者定離。これからも人に限らず「今目の前にあるものとは必ず別れることになるのだ」という思いをなるべく持って、一つひとつの出会いとご縁を大切に、人生を生き切りたいです。合掌。

今目の前にいる人は、金輪際もう二度と会えないかもしれない。
相手が死ぬかもしれないし、自分が死ぬかもしれない。

だから、目の前の人に失礼な態度を取ったり、理不尽な思いをさせたり、恨み節、愚痴を吐いてばかりの最後では勿体なく感じる。

夫婦も恋人も家族も友人も、必ず最後には別れる。

— 佐藤嘉洋 🦅 具鷲 (@guwashi_sato) April 8, 2021

PS　新しい車も10年以上は乗れそうです。

明るく生こまい　佐藤嘉洋