南ぬ島 石垣島2023 〜 具鷲紀行 〜

posted : 2023/06/22

【具鷲紀行とは】
作者の旅路の見聞・感想などを意のおもむくままに描写し、読者にあたかも一緒に旅行しているような気にさせる散文学。
〔具鷲辞典零版〕

いつの間にか中部国際空港(セントレア)から石垣島への直行便が運行していた。いざ、ANAで何年ぶりかの沖縄へ。家族水入らずの旅。石垣島は、初訪問だ!

ちなみに愛知県には、セントレア以外にも国内線の小牧空港がある。陸路では行きづらいところにFDA(フジドリームエアライン)が、痒いところに手の届く利便性の高い路線を飛ばしている。愛知県民はぜひ使い分けてほしい。青森、岩手、高知、出雲などへ気軽に行ける。

ということで久しぶりの空港に、子どもたちもはしゃいでいた。コロナ禍もついに明け、機内もマスクの着用は任意だ。

南(ぱい)ぬ島石垣空港に到着すると、先日キックボクシングの体験を担当したロシア人女性と偶然再会。あちらも家族旅行のご様子。帰りも同じ飛行機だったので、お子さんたちに巷で人気の「なにとぞ君シール」を渡した。

空港からレンタカーでホテルへ向かう道すがら、島内で人気のジェラード屋、ミルミル本舗の本店へと向かった。信号は驚くほど少ない。車両は軽自動車が中心で、みなゆっくりと走っている。島を横切る形で車を走らせ30分弱で店に到着した。

店外の景色は心地よく、丘の上に草原が広がっていた。ミルクと塩黒糖のジェラードと、草原での目一杯の背伸びと散歩で、フライトの疲れを癒す。


店から車でわずか数分で宿泊先のフサキビーチリゾートに着いた。駐車場へはシャトルバスが出るくらい敷地が広い。浜風が心地良いので、歩いて往来する人も多い。

南国モダンな洒落たロビー、リゾート感のあるBGM、幻想的なライティング。ここは本当に日本か。しかし、それもそのはず。石垣島は、沖縄本島から南西に400km以上も離れている。隣国の台湾からは約270kmしか離れておらず、台湾人観光客も多いそうだ。

地平線のもやで沈みかけの太陽は隠れていたけれど、運良く雲の下から顔を覗かせた気まぐれな夕焼けに、みな声を上げて見惚れていた。内海のもいいけどね。

早めの夕食はホテル内の中華、琉球新天地を予約した。オリオン生ビールが五臓六腑に染み渡る。朝食会場にもなっていて、こちらは中華ビュッフェ中心だ。もう一つは王道のビュッフェもある。そのときの気分で選べるので嬉しい。初日は誰より早く撃沈。10時間以上寝た。


2日目。夜明け前に目が覚めたので、やれる仕事をこなした。後回しにしてもいいが、後から責任を負うのは自分である。先憂後楽。やるべきことは先にやっておく。やれなかったときは、後悔して反省する。

朝食をたらふく食べたあとは、海辺で一服。風は涼しいくらいなので、寒がりで泳ぎの苦手な私は、結局海には一度も浸からなかった。ちなみに平泳ぎは、25メートルしか泳げない。基本的には、水中で息を吐けない。

遅めの昼食は、ホテル前の道をまっすぐ進んだところにある舟蔵の里へ。郷土料理だけでなく、カフェやギャラリー、宿泊施設も兼ね備えたまさに「里」だった。私は石垣牛丼を注文。美味。夜には三線も聴けるらしい。

その後、石垣島鍾乳洞へと向かった。悠久の時を感じさせる鍾乳石に自分の不注意で頭を痛打し、道の半分は頭を抑えながらの観賞。洞内はライトアップしたり、滴る水の下に金属を置いて音を鳴らせたりして趣向を凝らしていた。

マイナーな感じはするが、逆にそこが昭和人間の心をくすぐる。中にはトトロに似た鍾乳石や神仏のような石筍もあり、自然の造形美に驚かされた。

次は日本百景にも選ばれている川平湾。個人的にはホテルから一歩も出ずにぐうたらするのが好きなのだが、今回はずいぶんとアクティブな旅である。眠りたい。

浜辺にはヤドカリも生息していて、とてもかわいい。向こうも警戒心がさほどないので愛嬌たっぷりである。

ホテルに戻り、一旦昼寝だ。


夕方。ホテルからタクシーで繁華街のある石垣港方面へ。15分くらいで着く。グーグルマップを見たら名古屋と同じ地名の「新栄」公園があった。運転手に尋ねると「新栄」公園だった。助手席には三線が置いてあり、待機中に弾くそうだ。風情がありますなあ。

公園では軽く自重トレーニングやウォーキングをした。陽が落ちるまで時間を潰してから、予約を取ってあった焼肉屋、石垣島きたうち牧場へ。我が家の一番人気はカルビ。焼肉には白飯とビールがよく合う。

食後の軽い運動に石垣島の繁華街を練り歩いた。沖縄本島とはまた少し雰囲気が違って面白い。日本最南端のアーケード街、ユーグレナモールも散策したが、土産屋は閉店間際だったので、翌日も再訪して買い物をした。

ところで、ホテルのバーテンダーの情報によると、最近の石垣島には焼肉店が激増しているが、経営は石垣島以外の人も多いらしいとのこと。

3日目。もう一方の中華ビュッフェで満腹になってから石垣島最大の屋外プールへ。パラソルも多数用意されているので、座っているだけでも気分は上々だ。しかし沖縄とはいえ、半袖だとまだ寒く感じる季節。すぐにぬるま湯の屋内プールへと移り、すぐ上の露天風呂で一服。

部屋の出口の前に広がる芝生の中庭に、まんぼうを横にしたような形の自動芝刈り機が、のんびりと動いていた。充電が少なくなると、自分で充電器に戻っていくようだ。そしてまた知らないうちに、芝を狩りに出て行くのである。とてもかわいい。

昼食は、ホテル内のハンバーガー屋へ。もうジャンクフードとは呼べないお値段とお味です。

この日の観光はマングローブ林。通称、宮良川のヒルギ林。よく見ると、小さなハゼやカニが多くいる。足も抜けにくいほどのぬかるみだから靴は泥だらけだ。

帰り際、20名ほどの男女の集団が上の橋から降りてきた。彼らは円陣になって無言で座り込み、地面をじっと見つめながら何かを夢中で探している様子だった。ハゼやカニを素手で取ろうとしているようにも見えた。

地元民による食料の調達だろうか。しかし漁にしては、怪しい。なにせ素手だ。

また、円陣の傍らに座っていた女二人も怪しさを際立てた。整体師風の老齢の女が、南国風の中年の女の背中を目を瞑って指圧し始めたからだ。何かの儀式の一種のようなものだろうか。まったくもって謎である。しかし、謎なのも旅の醍醐味。謎のままでいいや。

一行はそそくさとホテルに戻り、夕方まで各々好きに過ごした。夕食前の移動に乗ったタクシーが、前日と同じ三線タクシーだった。旧市役所の建物が今は廃墟だということや、石垣島の天文台で、2016年に高校生が新しい星を見つけて新聞に載ったことなどを教えてもらった。

今夜は、繁華街から少し外れた場所にある地元に根差した感じの居酒屋、大衆魚場 魚仁。

刺し盛りは内地の魚も選べたが、沖縄オンリーでお願いします、と注文。基本的には、そこでしか食べられないものを食べる主義である。泡盛も一杯は飲む。

最終日。時間に余裕があったので、少し迷いつつ空港までのドライブを楽しんだ。初めての石垣島は大変面白かったので、また必ず訪れたい。でもその前に、セントレアからも行ける宮古島も一度は行ってみたいなあ。