選手が最も注力すべきこととは

posted : 2016/04/22
 text : 佐藤嘉洋

4月23日発売ゴング格闘技内でのコラム『佐藤嘉洋のキック千一夜』の主役である宍戸大樹と山本優弥とのことを語りながら、梅野源治とのスパーに話が脱線し、なぜか大黒摩季が出てきて、最後は泣きながら書いたっていう話。

4月23日発売のゴング格闘技に隔月連載『佐藤嘉洋のキック千一夜』が掲載されている。毎回、良い意味でも悪い意味でも思っていた以上に反響がある。私の文章に何か感じるものがある、と考えていいだろうか。出版不況でどこの本屋も青息吐息だ。もしよかったらお金を出して買っていただけると、本当にこれ幸いである。

立ち読みして、それから決めてもらってもいい。もう一度読み返しても楽しめる構成にした……つもりである。

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さて、今回の『佐藤嘉洋のキック千一夜』は、2016年4月に引退した2人の名選手が主人公になっている。シュートボクシングの宍戸大樹、Krush&K-1の山本優弥だ。宍戸とは直接の対戦経験はないものの、ずっと注目していた選手。優弥とは2度も拳を合わせている。

4月某日、掲載内容を決めるにあたり、神保町の行きつけの中華料理屋でゴン格の編集長と打ち合わせがてら食事をした。

「今回はシッシーと優弥でいきたいです」
「先月のゴング格闘技で、すでに両者のインタビューが掲載されていますけど……」
「それとはまったく違う内容にしますし、私の主観をビシバシ入れた、元選手ならではの想いを書きますので、ぜひ!」

私はチャーハンが飛ぶ勢いでまくしたてた。

「わ、わかりました。ちなみに今後、話を聞いてみたい人はいますか?」
「梅野源治と那須川天心と……川村ゆきえです!」

私はチャーハンのスープをズズっとすすった。

そんな話をしていたら、あれよあれよと梅野源治との対談&スパーリングが実現してしまった。しかも『キック千一夜』で取り上げるのではなくて、通常の取材として同じ号に掲載されることになった。梅野源治には今回に限らず、改めて私のコラムにも登場してもらいたいと願っている。

私には、現役時代から好きなファイターが2人いる。そのうちの1人が梅野源治だ。それは引退してからも変わらない。だから、彼とのスパーリングや首相撲は、私にとって念願叶ったといってもいい。ちなみに、もう一人の好きな選手の名前も、ゴン格の記事内にて発言しているので注目してほしい。

梅野とのスパー後、ムエタイの初歩的なバランス感覚すら忘れていた自分に腹が立った。ホテルに戻って1人で首相撲の体制を取り、昔の感覚を思い出しつつ、現代ムエタイのテクニックに感動し、必死に身体を動かしていた。上半身裸の自分が部屋の鏡に映り、ふと我に返った。オレはこの練習の成果をどこで発揮すればいいのだ? 自分に苦笑してしまったが、身体が喜んでいるのをひしひしと感じていた。

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首相撲は本当に奥が深い。その本質をいまだに捉えきれていない。そして、この技術は積み重ねがすべてなんだと改めて思い知らされた。毎日40分〜1時間首相撲をやっていた若い頃が懐かしい。かといって、もう2度と戻りたくもない。私にとって首相撲が一番嫌いな練習だったからだ。けれど、一番嫌いな練習が、自分の一番の得意技でもあった。

翌日、首が筋肉痛になった。高校生のころ、先輩の佐藤孝也氏や鈴木秀明氏に揉まれていたころの、あの懐かしい痛み。梅野源治とは、2ラウンド程度の首相撲だったにも関わらず、それなりのダメージを受けた。ということは、週1で練習を続けているとはいえ、今の私では、ムエタイのトップ選手と張り合う資格がなかったともいえる。またすぐにでも、梅野源治と首相撲をやりたい。しかし、やるからにはもう少し身体を作らないといけないし(言い訳)、その練習を取る時間もないし(言い訳)、親も歳だし、

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である。

一方で、梅野は私とのスパーと首相撲で汗だくになっていたのに、あのあと近くのカフェで対談を終わらせたあと、さらに3時間のジムワークをするため、すぐに戻っていった。試合前の現役選手には心底脱帽である(※梅野は5月1日にディファ有明で試合)。かつて私の現役時代に、年上の選手が名古屋JKファクトリーへ出稽古に来て、私の練習量に舌を巻いていたのを思い出す。現役選手はいつの時代も尊敬に値する

「強いだけじゃダメだ」と格闘技関係者はいう。確かにそうかもしれない。でも、私は、極論を言えば「強ければいい」と思っている。選手は強くなることに最も注力すべきだ。チケットを売ることや、スポンサーを探すことも大事だが、一番はやはり、強くなることだ。強さ以外の魅力を見つけるのは、周囲の関係者の仕事でもある。「関係者」には今の私も当然含まれるのだが、選手が輝けるようにもっと努力をしなければならない。

現在の梅野源治の状況を私は憂いている。彼こそ、実力からすれば、世間からもっと評価されなければいけない選手だ。K−1系はだんだんと勢いがついてきているが、ムエタイ系は依然として低迷していると言わざるを得ない。近い将来、これから後に続く選手から

「ぼくは数億円もらっています!」

という夢のある話を聞きたい。一時期は日本人最高のファイトマネーと言われた私の実績など大きく凌駕して、大成功を収めてほしい。そして、もっともっと多くの人に称賛されてほしいのだ。

現役選手の皆さん、これからもがんばってください。

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途中、話は梅野源治に逸れたが、本題に戻そう。
今回の主役の宍戸大樹と山本優弥のことを思い浮かべていたら、書きながら途中途中で涙ぐむ自分がいた。コラム最後に両者に伝えた言葉は、自分の思いとも照らし合わせて、涙を流しながらキーボードをタイプした。

誇張なく、魂を込めた作品だ。
だから私は、4月23日発売の『ゴング格闘技』を、ぜひあなたに読んでもらいたいのだ!!

明るく生こまい
佐藤嘉洋

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