【具鷲小説とは】
作者の構想力と読者の想像力によって、顔、声、性格などを意のおもむくままに描写し、読者それぞれ独自の想像世界を構築させることを目的とする散文学。読者は、文字だけで世界を構築できることに希望を抱き、自分の想像力があれば宇宙の果てまで行けることに驚嘆する、かもしれない。
〔具鷲辞典零版〕
〜 アタイ、男を語る 〜
ねえ知ってる? アタイは想像上の虚構の女なの。だからどんな時代も行き来自由よ。名前もあるにはあるけど、別にどうでもいいことだわ。アタイはアタイよ。
良い男は、探せばどの時代にもいるわ。見つかるかどうかは自分の心次第じゃない?
それに大体、自分は良い女なのかっていう話。ちなみにアタイは、良い女よ。それなりの努力はしてきたつもり。努力を放棄した一部の女から妬まれたりするけど、どうでもいいことだわ。
ねちゃねちゃしている男は駄目ね。軽薄な男も嫌い。アタイは涼やかで円滑洒脱な男に弱いの。
「僕の取り柄は誠実さだけさ」
って、バーで回りくどく口説かれたこともあったわ。でも、ふざけないでって感じじゃない?
誠実かどうかはアタイが決めることよ。2、3杯お酒を飲ませて、おだて上げたらイチコロのくせに。あ、イチコロってのは、一撃でコロりの略ね。
実はアタイ、スパイをしていた時期があるの。あるとき、簡単に口を割らない男がいてね。その男の持つ情報を得るために、アタイが抜擢されたこともあったのよ。
問うに落ちず語るに落ちるっていうでしょ。そこそこ頭の良い男は、残念ながら馬鹿じゃない。だから素直に秘密を教えてくれやしない。
聞いたって答えるわけがないのよ。だから良い気分にさせて、向こうから気分よく話してもらうってわけ。真っ当な情報なら、儲けは減っても大した損にはならないわ。
自分の能力の低さを不器用さで誤魔化す男も論外ね。不器用なら何でも許されると思ったら大間違いよ。生まれつき世界有数の美男子ってわけでもないくせに。努力を放棄した男に魅力は感じないわ、アタイ。
ちなみに男の顔は、人生がそのまま滲み出てくるもの。ぱっと見の人相の良し悪しじゃないわよ。滲み出たものよ。誤魔化しの効く女とは少し話が違ってくるわね。
ところで、アタイにも男を乗り換えた過去があるわ。人生は一度きりよ。どうせならプラスになる男がいいわ。
「俺を乗り捨てるとは」
って、車内で怒鳴られたこともあったわ。でも、怒鳴りたいのはこっちよ。アタイが求めたとき、この男はいつも居なかった。その上、浮気性でぞんざいで一流を目指しもしない。そんな男の車には、乗りたくもないわ。
そうしたらこの男、その後、結構出世しちゃったのよ。正直、惜しいことしたなとは思ったわ。だけど風の噂で、アタイとは違う元恋人に、床にこぼした水を舐めさせて、覆水盆に返らずとか言って、何もせずに帰したらしいのよ。ひどくない?
アタイ、噂話は嫌い。だから話半分に聞くわ。でも、過去のアタイへの振る舞いを見ても、あの男はそういうことをやりかねない。
基本的に、ひょっとこ野郎なのよ!
別れて正解よ。安心して、良い男は、探せばどの時代にもいるわ。あとアタイは一流の男も好き。一流の男には、どことなく品を感じるわ。
たとえば、食事を共にすれば大体わかるわ。合わないと思ったら無理よ。仕方ないわ。向こうからそう思われる可能性もあるわけだし。
ただ、最低限の食事作法を身につけることくらい誰にでもできる努力の一つじゃないかしら。親のせいにするのは簡単だけど、それで成長できる? 自分のせいよ。
努力をすれば必ず一流になれるって訳じゃないけど、一流の男は必ず努力をしているわ。最初から一流はいないの。努力を積み重ねられるかどうかね。
自分には何も長所がないって悲観している男もいるけど、誰にだって長所はあるものよ。自分の短所は誰かにとっての長所よ。ないなんてことはないの。
さっきの覆水盆に返らずの男にも、出世したからには何かしら秀でた能力があったのよ。アタイ、それは認めるわ。傲慢な男は腹が立つけど、ときに魅力を感じることもあるわ。
アタイは恋愛体質。一流の良い男が好き。一流になりそうな良い男も好き。たとえ一流になれなくても、なろうとするその姿勢に、アタイは感激しちゃうの。
ああ、そろそろ時間ね。アタイ、ピーチクパーチク散々おしゃべりしちゃってごめんなさいね。それじゃあまたね。ごきげんよう。さようなら。
と、アタイは出て行った。
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