格闘家とは表現者である。鍛え上げられた肉体は雄弁に語り、極限の世界で研ぎ澄まされた思考は真実を伝える。格闘家を媒介に、リングを超えて世にある様々な商品やサービスを映像、写真、言葉を駆使して広告する「HERO PROJECT」。
ウジオと呼ばれる男が、アタイと呼ばれる女に恋をしていた。 アタイは嫌がる素振りを見せながら、自分が求められることに対しては喜びも感じていた。
断崖絶壁の山奥で修行を積んでいる坊主がいた。本人は「トラ」という名の猫を飼っていると言うが、一目では虎である。ただ、鳴き声は「にゃあ」だった。
ある街で『ウージー』と呼ばれる菓子が人気だった。 不思議な色で、不思議な味をしていた。 先の方が不味く、根元の方が美味かった。 量は絶妙だった。
ある都会に、デス代という不細工な女がいた。人生は才能で決まると思い込んでいて、美しい女を見ては羨み、自分の手入れは怠るばかり。ついには前歯も一本抜け落ちてしまった。
ここではない世界で、ペキオと呼ばれて親しまれていない社会人がいた。 自分にも厳しいが他人にも厳しく、一つのミスも見逃さない。 おや、また何か同僚のミスを指摘している様子だ。
「にゃあ」と鳴く虎が住む断崖絶壁の山を二つ越えたところに村があった。 グコーじいさんもそこに住んでいた。 物心ついた頃から、山を大きく迂回しなければならない道のりに苦しんでいた。
本来なら10年以上時間のかかるワクチン開発が、たったの1年超で量産体制に入ることができた。 ある程度の犠牲はあったが、医学は驚異的な進歩を遂げたといえる。 新種のワクチンは年々開発され、近い将来あらゆる病気のワクチンができる。 多くの人間は、健康のまま寿命を迎えるようになる。
「ところで都会では、ひどい風邪が流行っているんだって?」 「お前さん、こんな山奥で、よくそんな情報を知っているな」 「ああ、トラから聞いた。最近、動物と話せるようになってね」 ある三人が断崖絶壁の山奥の古寺にいた。一人は修行中の坊主。残りの二人は坊主と長年の悪友で、都会から遠路、山奥まで来た。一升瓶を持って。